ご相談者:
夫 IT系企業のシステムエンジニア(30代後半)
妻 パート勤務(30代後半)
子 4歳
ご相談内容:
現在地方都市の賃貸住宅に居住中。
老後も安心して住まいを確保できるかが不安で、住宅購入の検討をスタート。
一方、お子様には東京都内の大学に進学して知見を広めてもらいたいと考えている。
在学中の学費・生活費など今後予定される大きな出費を想定すると、今、住宅購入に踏み切って良いのか不安。
具体的な数字に置き換えて比較すると、今とどのように変化するのかが分かりやすくなります。
ご相談者様のお住まいの地域やご年齢を考慮した数値を引用して比較してみました。
賃貸住宅に住み続ける選択をした場合
家計としての住宅費は現在の家賃のみの負担で変化なし。
(保険料・住み替えの家賃上昇、更新手数料などは考慮せず)
ただし、最低でも「住宅購入した場合の1か月のローン返済想定額-現在の家賃」の差額を毎月貯蓄に回して将来に備えることをお勧めします。
仮に老後の住宅を「サービス付き高齢者向け住宅」とした場合、お住まいの地域内の施設では使用料の中央値は約14~16万/月となっています。
年金生活の中でこの費用を捻出する負担は大きいので、しっかりと資産を増やしていく必要があります。
住宅購入を選択した場合
月々のローン返済額を試算し、現在の家計に上乗せできるかイメージしていただきます。
例:4000万円 の物件を購入
手持資金 800万円
ローン借入額 3200万円
試算条件
返済期間25年(2025年1月借入、2050年1月完済)
適用金利
フラット35の最頻金利を例に1.46%全期間固定金利とする(2024.6現在)
「フラット35 こどもプラス」の優遇措置を利用し、当初5年間は1.21%
※適用金利は借入する金融機関によって異なります
◎当初5年間 123,665円/月
◎以降20年間 126,665円/月
総支払額(元金+利息)37,819,409円
住宅取得後はローンの返済と並行して、固定資産税等の納税および住宅の修繕費等の準備をしていく必要があります。
特に戸建の場合、数年に一度の住宅設備の修繕・取換え費用を見込んで準備をしておくと急な出費に慌てずに済みます。
内装模様替え | 168.3万円 |
台所・給排水改善 | 205.9万円 |
トイレ設備改善 | 99.3万円 |
浴室整備改善 | 177.3万円 |
屋根外壁等の塗り替え工事 | 216.3万円 |
分譲マンションの場合、個人で管理する範囲は戸建に比べて少ないものの共有部分について購入後すぐに費用の積み立てが開始されます。
近年は積立金額の上昇傾向がみられますので、購入費用だけでなく維持費についても計画が必須です。
マンション修繕積立金
修繕積立金平均 11,243円
国土交通省「平成30年度 マンション総合調査」より
マンション管理費
月平均管理費 184円/㎡
平成27年以降築マンションの場合
専有面積75㎡の場
13,800円1ヵ月あたりの費用負担
1ヵ月あたりの費用負担
25,043円/月(駐車場利用料含まず)
お子様の教育費について
子育て支援の一環として教育費の無償化が進む気配がありますが、現時点ではまだ給付制限が多い為ご自身で備えておく必要がありそうです。
・幼稚園⇒大学まですべて国公立の場合 822.5万円
・幼稚園⇒大学まですべて私立の場合 2307.5万円
※学校外活動費(塾習い事等)を含む
参考:教育資金はいくら必要?かかる目安額をご紹介|日本政策金融公庫 (jfc.go.jp)
https://www.jfc.go.jp/n/finance/ippan/kyoikuhi/cost.html
上記リンク先から金額の内訳、詳細を確認できます。
設定を変えてシミュレーションもできます。
※大学生で自宅外通学の場合は、仕送りや自宅外通学を始めるための費用(アパートの敷金・礼金、家財道具の購入費等)も発生します。
※大学入学費用については、入学先の大学へ支払う費用以外にも、受験費用や入学しなかった学校への納付金が必要になる場合があります。
大学受験費用
教育費において大切なのは、ご両親がどこまでサポートするかをあらかじめ話し合っておくことです。特に大学受験のための塾通い等にかける費用は家庭の教育方針による差が大きく、大手予備校系列の現役生向け塾(映像授業)では年間100万円前後かかるケースもあります。
国立 | 81.8万円 | |
初年度納入金 | 私立文系 | 118.9万円 |
(入学金・前期授業料・施設利用料) | 私立理系 | 156.6万円 |
これらを高校3年生の3月中に大学へ納入することになるので資金を準備するうえで注意が必要です。
地方から東京の大学に通学する場合
自宅外通学生にかかる年間生活費(住居費・光熱費含む費用)
平均約110万円/年
以上、賃貸住宅契約・住宅購入と2つの選択肢から具体的な数字を使って家計にどのような変化が予想されるかをご説明しました。
まとめとご提案
◇現在の新築住宅事情は
・ 材料、人件費の高騰により建築価格が上昇している
・ そのあおりを受け、中古物件の販売価格も上昇している
◇今後想定される傾向は
・人口減少により、住宅が供給過多になる予測 ⇒住宅価格の下落?
・2050年には日本の人口の約4割が高齢者という世の中に⇒高齢者を取り巻く住宅事情も進化していくのでは?
という想定を元にすれば、このまま賃貸住宅に住みつつ貯蓄額を増やし、心から「マイホームを手に入れたい」と希望するタイミングで購入できるよう備える、または将来、高齢者用賃貸住宅などの利用料として備えるのも良いかと思います。例えば、お子様が独立した時点でご夫婦お二人の生活に合ったサイズの住宅を購入するのも良いですね。
一方、マイホームを所有し自身の持ち物として生活を楽しむ喜びもあります。
新築(築浅)物件であれば賃貸専用物件より住宅性能が高いケースが多く、より快適に暮らせることもメリットです。
居住期間が長ければ長いほど、そのメリットを長期間享受できるのはうれしいですね。
現在は住宅取得のための税制優遇措置が取られており、お得感もあります。
ご相談者様はご自身の希望に合う好条件でキャリアアップを望める高いスキルを持っており収入が安定している、居住希望エリアが奥様と一致していて、将来にわたって転居の希望もないことから、「持ち家」を選ぶリスクが少ないタイプであるといえます。(※賃貸住宅を選択する最大のメリットは「流動性/居住地を固定されない」と考えた場合において)つまり客観的にはどちらを選んでも無理のない計画を立てられる属性の方であるといえます。
この2つの選択肢に絶対の正解はないこと、2,30年先の予測はできないことを承知の上で何を選び取るか?
家計の現状をしっかりと把握し無理のない計画を立てるのが必須条件ですが、ご相談者様の場合、ご家族との「今」の暮らしの中で「何を大切にするのか?」「(賃貸と持ち家と)どちらの生活を真に望むか?」という視点で選ぶと意思決定後の満足度が高まると思います。
将来の不安(老後の住宅確保)のために今望むものを手放すのではなく、今の希望を叶え積み重ねていくためにどんな手段を選ぶか?という視点です。
相談者様は好条件の求人があれば積極的にキャリアアップ(=収入アップ)を目指すご予定とのことですので、賃貸を選ぶのであれば将来に向けて積極的な貯蓄や資産運用の検討をお勧めしますし、マイホーム購入を希望するのであれば老後だけにとらわれない、「今」家族が楽しく暮らせる家探しをお勧めします。
相談者様のご感想
◎FPいながきのレポートは分かりやすかったですか?
YES
具体的な数字があり、イメージし易かった。
素晴らしいレポートありがとうございます。
◎回答、提案の中で実際に行動に移せそう/
YES
それはどのようなものですか?
住宅ローン返済と賃貸家賃の差額を貯蓄に回すという考え方。
ライフプラン表/
こちらを参考に、今後のライフプランを考えてみたいと思います。